十二夜の、十二人 その③ 佐藤誠(オーシーノ公爵)
こんばんは。演出家の田野です。
十二夜連続でお送りしようと試みて始めた「十二夜の、十二人」。
体調やらネット環境やらの影響もあって思うように進んでおりませんが、、、
今後もぼちぼちやっていきたいと思います。
さて。今日は第3回。
今日あたりは、ようやくFacebookやツイッターとの連携も整ったんじゃないかと。
ということで、第3回目に紹介したいのは、こちら。
オーシーノ公爵役の、佐藤誠さんです。
俳優として、青年団だけでなく、東京デスロックと渡辺源四郎商店にも所属する誠さん。
今回初めてRoMTに出演していただきます。わー、うれしい!
芝居をみながら「ああ、この人はいい俳優だなあ」と感じる人に共通するのは、
・・・あ、といってもこれは僕自身の好みにしかすぎませんが、、、
劇場の中で「客席側から舞台側にむけた風をおこせる人」だと思っていて。
ロンドンやニューヨークでみる芝居でも、
あるいは現代劇でも歌舞伎でもミュージカルでも、この感じは変わりません。
空気を“押す”ことは、どんな俳優でもわりとできる。
でも空気を“引きつける”ことで
劇場空間をコントロールできる俳優が舞台に立っているとき、
僕はついつい見入ってしまうんですよね。
で、総じて、そういう俳優って、シェイクスピアとの相性がいい。
劇場って、人がたくさん入ってくる場所だし期待でたかぶる気持ちもあったりして、
基本的に空気が平熱よりちょっと高いじゃないですか。
そんななかで、青年団や東京デスロックでの芝居に出演してる誠さんは、
いつだって凛としてひんやりとした感じがあって、
だから劇場の空気は自然の摂理に従って「高→低」に流れる。
そこに風がうまれる。意識的なのか無意識的なのかはわかりませんが、
誠さんは、そういうふうに空気を舞台側に引き込むのが本当に上手いんだよなあ。
ということもあって、『十二夜』をやるにあったって、
誠さんにぜひとも出演していただきたかったのでした。
そんな誠さんに今回お願いした役は、「オーシーノ公爵」。
オリヴィアに恋をして、思うようにいかない運命を嘆き、もがき苦しむ男。
シェイクスピアらしい修辞的でロマンチックなセリフがそこかしこに散りばめられていて、
登場してはいささか仰々しく、表現過多といっていいほどに、
自分自身の「海のように貪欲で、すべてを飲み込む」愛の大きさを語る。
普段はクールで寡黙な誠さんのイメージからすると、
オーシーノという人はまったく逆の感じがするんですが、
でもそここそが面白いんじゃないかな、と。
これまでに何度か『十二夜』の実演を観てきましたが、
オーシーノが素晴らしかった!と思えたプロダクションって、
本当に数えるほどしかない気がします。不思議なんですけど。
今回、誠さんの演じるオーシーノ、
このキャラクターのひとつの理想像を提案するようなものになるんじゃないかと、
僕自身とてもワクワクしております。
年末年始に実施したプレ稽古、
「何はともあれ“シェイクスピアの韻文ルール”を守って読んでみましょう!」
という課題を課してみたのですが、
最もルールの<本質>を掴んでいたのは、ほかならぬ誠さんでした。
・・・「ほーらねっ」ってなもんです。演出家としては。
第3回目は、オーシーノ公爵を演じる佐藤誠さんの巻、でした。