十二夜の、十二人 その⑪ 磯谷雪裕(セバスチャン)
演出家の田野です。
今日はバレンタインデーでしたね。
みなさん素敵な時間を過ごされましたでしょうか。
RoMTの稽古場にも女性陣から素敵な差し入れがたくさんありました。
ありがたいことです、ほんとに。。。
あ、そういえば写真とっておけばよかったな。。。
までも、こういう日の稽古場はいいもんです。
次は、もう公演中ですが、ホワイトデー、ですか。
男性陣の番ですね!
さて。青年団リンクRoMTの『十二夜』、初日まで1ヶ月を切りました。
2月は28日までしかないので、さらに短く感じます。
ようやく少し形がみえてきた場面、まだまだ手つかずの場面、様々ありますが、
この数日考えているのは、、、
「言葉を、自由にする」
という感覚。
シェイクスピアは、とにかく言葉。言葉。言葉。
・・・このあたりのことに今回RoMTがどうアプローチしようとしているかは、
また何らかの形で書こうと思っておりますが、
要は、《体が先に意味を説明しないこと》、ということ。
登場人物たちが知覚したことは、言葉にまず還元されるわけです。
じゃあ、書かれている言葉をただ流れるようにしゃべってしまうと、、、
それはもうまったく面白くない。
言葉のふくらませ方、言葉の引き方(これがとても重要で、かつ難しいところですね)、
言葉の穴の開け方、、、そういったところを、俳優ひとりひとりが自由に扱えるようにする、
というふうに、演出家としては、もっていきたいなあと。思っているわけです。
青年団の芝居では、セリフはできるだけフラットにしゃべるようになっていますが、
そういう意味では今回は真逆で、言葉にわりと色づけをしてもらっていて、
むしろ体の状態をフラットにする、という感じが、いまのところは、多いかな、と。
・・・むろん、それが全部ではありませんが。
言葉がフラットになるところも多々ありますし。
言葉がフラットになるときには、それは《アンビバレント》な状態でもあり、、、
・・・ま、何を書いてるかわからなくなってきましたので、、、このへんで、本題。
『十二夜の、十二人』も残すところあと2名となりました。
今回ご紹介するのは、こちらの方。
セバスチャン役の、磯谷雪裕さんです。
今回初めてご一緒させていただきます。
親しみを込めて「ゆっきー」と呼ばせていただいております。
ゆっきー、これまでに演劇集団・円や加藤健一事務所などの養成所に所属していたことがあるそうで。
今回のキャストのなかではちょっと異色の経歴の持ち主でもあります。
出会いは、本当に偶然でした。
それはまだ、全体のキャスティングは道半ば。
「セバスチャン、どうしようかなあ、、、」と思い悩んでいたときのこと。
セバスチャンのキャスティングって、ある意味とても難しいのですよ。
戯曲の性質上、どうしても先に「ヴァイオラ」を決めてしまうから。
そして戯曲の性質上、最後の最後に生き別れた兄妹が出会う場面があるわけで、
並んだ二人はある程度似ている必要がある。極端に背丈や体型が違ってはだめだし、
それを良しとするには演出上かなり無理をしなければいけない。
今回のRoMTの公演では、やはり先に「ヴァイオラ=李そじん」が決まっていて、
そじんとのバランスでセバスチャンを決めなくちゃいけなかったわけです。
ところが、自分の知ってる範囲に、ピタッとはまりそうな俳優が見つからず、悶々とする日々。。。
そんなある日。
たまたま芝居を観に行きました。高円寺の、明石スタジオ。
そこに出演していたのが、ゆっきー、でした。
いや、その芝居じたい、かなり面白かった。
10分間の休憩を挟んで、上演時間が3時間。でもまったく長いと感じなかったし、
むしろあと2時間ぐらいやってほしい勢いだったなあ。
で、それに出ていたゆっきー。
まずパッと引きつけられたのは、“語り”が抜群に良かったことです。
その作品じたい、会話劇というよりは“語り”で物語が進行するような話だったんですが、
ゆっきーは運命に翻弄されながら時代を進む中心的な人物を演じていて、
それこそただ押すだけではない、“引く語り”の巧さにまっさきに注目しました。
で、よくよく見てると、背格好とか、目の感じとか、「そじんに似てる気がするなあ、、、」と。
心のなかでは、「あ、見つかったかもしんない!」って思ったのをよく覚えています。
終演する頃には、よし、ダメモトで、お話をふってみよう、
恥ずかしいけれどスカウトしてみよう、と心に決めたのでした。
で、その公演に出演していた僕の関係者に話をつないでもらって。
後日実際会ってお話しをして、出演を快諾いただいたのでした。
ゆっきーからすると、どこの馬の骨ともしらない人から急に話を振られて、
さぞかしビックリしたことでしょう。。。一度そのへんの話も聞いてみたいものです。
・・・いや、照れくさいからいいか。
『十二夜』の稽古を観ながら、ゆっきーは実に興味深いなあ、と思うことがしばしばあります。
俳優としては、芯があって、先にも書いたように“引く”語りが素敵です。
セバスチャンには何度かモノローグがあるので、そのあたりぜひ楽しみにしてほしいところ。
人としては、真面目で真摯で、それでいて変態で(笑)、でもきっとこれ最大の魅力だなあと思うのは、
他人の懐へ入り込むのが本当にうまいこと。いやー。見習いたいです。マジで。
おそらく、他人の懐へ入り込むのがうまいというのは、
セバスチャンという人を演じる上で、すごく重要な要素になってくるような気がしています。
アントーニオが恥ずかしげもなく“愛”を捧げると発言することとか、
オーシーノやオリヴィアが一目で立派な身分であると見抜いてしまうこととか、
それはセバスチャンという人に「引きつける何か」があるからだと思うのです。
ゆっきーの、押すよりも引く力の強さは、絶対にセバスチャンの資質との相性がいいはず。
いやー、偶然の出会いにほんと感謝ですね。
ところで、ゆっきーは、『十二夜』の稽古と平行して、別の公演の稽古もしています。
2月26日〜3月2日まで、中野ウエストエンドスタジオで行なわれる
チョコレイト旅団『ラストマンスタンディングマッチ』という作品です。
http://chocolateryodan.wix.com/chocolate-ryodan
これまた直前まで掛け持ちで大変だと思いますが、、、
ぜひこちらにも足を運んでくださいませ。
というわけで、第11回目は、セバスチャンを演じる磯谷雪裕さんの巻、でした。