RoMT.

公演に寄せて

TOP | 公演詳細・ご予約方法 | 『 macbeth/CITIZENs 』あらすじ

 

 

「公演に寄せて」

 

 

観劇いただく生徒たちや保護者のみなさん、先生方、そして一般のお客様方から毎年絶賛の声をいただいております《海城高校×シェイクスピア》。おかげさまで今年も無事開催されることとなりました。

 

・・・ところで。

 

ロンドンにロイヤル・ナショナル・シアターという素晴らしい劇場があります。名実ともにイギリス演劇界の最高峰と位置付けられ近年話題作も連発している劇場ですが、近年は映画館などで気軽に舞台中継を観ることができる《ナショナル・シアター・ライブ》という企画が本国のみならずここ日本でも大変好評で、日本での存在感も以前に増して大きなものとなっています。そのナショナル・シアターでは、この8月、プロの俳優たちと一般の希望者とが共に舞台に立ちシェイクスピアの翻案劇を上演する企画《Public Acts》が発表され話題となりました。英国では現在、社会的多様性(=ダイバーシティ)を受け入れた上演形態が激しく求められており、その一環として、プロとアマチュアの垣根を超えて生まれる新しい表現の可能性が期待されているのでしょう。

 

私たちの《海城高校 ×シェイクスピア》企画は、プロの俳優・スタッフと現役高校生たちの出会いによる新しい舞台表現の提示を、ある意味ナショナル・シアターに先駆ける形ですでに2年前から始めました。おかげさまでもう長く演劇の世界に携わっていますが、現役の高校1年生たちが、プロの俳優や演出家やスタッフとともに本格的なシェイクスピアの上演を行うなんてことは、日本ではもちろん世界でもまるで聞いたことがありません。それだけとてもとても貴重な、海城高校にふさわしい最先端の取り組みだと言うことができると思います。

 

一昨年の『ジュリアス・シーザー』、昨年の『Hamlet Interactive4.0』に続き、第3弾となる2018年は、シェイクスピアの“四大悲劇”のひとつである『マクベス』を『macbeth/CITIZENs 』と題して上演します。

 

『マクベス』は、イギリスはもとよりここ日本でも、そして世界中でも、最も上演されているシェイクスピア作品のひとつです。スコットランドの史実をもとに書かれ、1606年に初めて上演されたとされていますが、野心に苛まれ、次から次へと犯罪・悪事を上塗りしていく権力者と、欲に取りつかれた裏で夫を操る妻の姿を中心に描いた『マクベス』の物語はやはり鮮烈で、古びるどころかむしろつい最近書かれたかのようなリアリティがあり、また繰り返されてきた世界史上の様々な出来事とも符号します。

 

また、今回の『 macbeth/CITIZENs』には、この企画の過去最多【50名】を超える出演者が登場します。そもそも『マクベス』はシェイクスピアの作品の中でも最も短く、また出演者数をできるだけ削って上演することが通例のようになっている作品でもあります(数年前には一人で全役を演じるバージョンが日本で上演されました)。50名以上の出演者で上演されるというのは、マクベスの上演史においても極めて異例なこと。しかし、50名以上が出演するからこそ表現できることがあります。実のところ、出演希望者が多くいてくれたことは、今回頭の片隅で描いていた演出上のコンセプトやアイディアの実現に勇気をもらい、そしてものすごく力強く背中を押してくれました。

 

毎年のことですが、ここでしか表現し得ない、しかし実に真っ当にシェイクスピアの本質に迫る上演を、今年もお届けいたします。

 

どうぞ目撃しにいらしてください。

 

RoMT  田野邦彦